051
羽根

あなたの背には、小さな羽根があったのに。
其の小さな羽根を、何処に置いてきてしまったの。
とても儚くて、綺麗だったのに。
其れは、あなた自身のようで、美しかったのに。

いつか消えて無くなってしまいそうで。
いつ失うのかわからなくて、いつも怯えていた。
でも、怯えていたのはあなたではなくて、いつも私だった。

消えてしまいそうなあなたの羽は、いつも私の傍にあって。
儚く、美しく、あなたの歴史を物語っていた。

白く、小さな羽根はいつも寂しそうで。
誰かに護ってもらっているかのようだった。
でも、其の相手は私ではなくて。

いつも傍に居たのは、私の筈だったのに。
いつのまにかあなたは、私の傍に居なくて。
其れは、二人の終わりを示していて。
やがて、私にも。あなたにも、
背中についた小さな羽根は見えなくなって、無くなってしまって。

二人の終わりは、二人の儚い命さえも終わりにさせてしまう。
二人の背についた羽根は、無くなると同時に、二人は旅立って逝く。

けれど二人は、空の上でも倖せになれなくて。
そんな事が、哀しくて、虚しくて、寂しくて。
二人の泪が、地に落ちるたび、恋人達は別れを告げる。

まるで其れは、何かの儀式のように、残酷で。

あなたの羽根が、私の羽根が。
小さな羽根が、恋人達の心を揺らす。

誰もが持つ、小さな羽根が。
誰も知らない、自分自身で。
誰も気付かない、もうひとりの自分。
たったひとり気付くのは、私の羽根をもぎ盗ってしまう、あなただけ。

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© 2005 Uri.