054


此の刃で付けた紅い疵は、とてもとても浅くて。
まだ何か足らなくて。
本当は、もっと深く傷付けたいのに。
でも其れは出来ない。
僕には出来ない。
僕は弱虫だから。
弱くて、何も出来なくて。
臆病でどうしようもない。
そんな自分が厭でしょうがなくて。
何もかも厭になって嫌いになって。
不安で。恐くて。悲しくて。寂しくて。
「助けて」と云えなくて。
何をすればいいのか解らなくて。
誰も理解ってくれない僕の傷は 日に日に大きくなって往く。

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© 2005 Uri.