083
真っ白な

此の席から見える景色は、とても魅力的だった。


君は、何時も此処でこんなに素敵な景色を見ているんだね。

そう想った時、胸がはち切れそうになった。
きっと、きっと君は此処から見える景色が好きなんだ。
そうでなければ、ずっと座り続けてなんていられないもの。
僕は、此の景色に嫉妬したんだ。
此処から見える、此の景色に。

君が何時も見ている、此の景色に。


此処に居るときの君は、僕にとって遠い存在だから。
決して、手の届かない人だから。
其れでも、そんな君を手に入れたくて。
手に入れることの出来ない自分が厭で。
手にするために、此処を壊そうと思った。



でも



此処を壊してしまったら、君はどう為ってしまうのだろう。
もっと手の届かない人に為ってしまう気がした。
届きそうで、届かない、そんな人に。



此処から見える景色は、とても綺麗で。
其の景色を見る君も、とても綺麗で儚くて。


汚れた僕には手の届かない、真っ白な人。
決して手の届く事のない、真っ白な 人。

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