087
入れ物

何もない、何独つない場所へ逝きたい。

何も無くていい。
只、其処に其の場所が存在するだけで、
其れだけで僕の心は満たされる。


何もないのは、僕だから。
人に何かをしてあげる事なんて出来ない。
人に何かを与える事なんて、出来る筈が亡い。
だって、僕には、何も無いから。

からっぽで、何も考えられない人間。
否、只の入れ物なのだ。
空っぽの、
僕と云う名の、人間の形をした、入れ物。


此処に何かを入れたいと思う人は居ない。
此処に入れたら、亡くなってしまう事を
皆は知っているから。

知らないのはそう、僕只独り。

何かを入れてもすぐに亡くなってしまう。
其の入れ物を開けると、たちまち消えてしまう。


そんな、僕と云う名の人間は、
誰も知らない、知る事も亡い此の場所で。
此の入れ物の中に何も入れずに息を引き取る。

其れが、僕の使命であり、僕の人生其の物だから。


何もない、何独つない其の場所で、
僕は  只  独り...

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